「ごめんなさい、迷惑かけて。まともに出かけられないでごめんなさい」
既に消え入りそうな声で、今日子は言った。
「何をバカなことを言ってる。謝らなくていい。誰かに嫌なことでも言われたか?」
「……」
「黙っているところを見ると何か言われたんだな? 言ってみろ」
「……おトイレで女の子たちが、部長のこと格好がいいって。絶対、彼女か奥さんは綺麗な女だって」
やっぱり、世間はこの整った顔の傍にいる異性を美化し、勝手に美男美女を作り上げている。今日子では役不足だと見ればすぐに分かってしまう。拭いきれない過去の傷が歯止めをかける。
「俺の女は綺麗じゃない、愛らしくて美しい人だ。全然次元が違う。今日だって、お前のこの透き通るような肌を見せたくなくて、カーディガンを着せたんだ。なんで、そんなに胸元があいてるんだよ。ちょっと目を離すと、デパートで男の店員に話しかけられてばっかりで。化粧品売り場にいた男だってお前の髪にいいオイルがあるからなんとか言って、触ろうとしていただろ。そんなことさせない。お前は誰にも触らせないんだ。……俺よりお前の方が魅力があるんだぞ?」
「……部長、随分とよく私を観察していましたね」
今日子は、思わず感心してしまった。
「観察じゃない、俺の目に届かない所にいるのがイヤなんだ。今、言っておく。俺は今日子限定だが、独占欲が強くて、やきもちやきだ。覚えておけ」
「……はい」
今までの気分は何処へ行ったのか、噴出して、笑ってしまった。
「そうだ、いつも笑っていろ。お前は笑顔が似合うんだから」
頭を、引き寄せ軽くキスをした。
今日子は胸が苦しかった。だが、後藤のこの言葉につかえていたものがすっとなくなっていく。今日子にとって後藤は救いの神なのかもしれない。
「はい」
「もう、大丈夫か? 行こう」
「はい」
既に消え入りそうな声で、今日子は言った。
「何をバカなことを言ってる。謝らなくていい。誰かに嫌なことでも言われたか?」
「……」
「黙っているところを見ると何か言われたんだな? 言ってみろ」
「……おトイレで女の子たちが、部長のこと格好がいいって。絶対、彼女か奥さんは綺麗な女だって」
やっぱり、世間はこの整った顔の傍にいる異性を美化し、勝手に美男美女を作り上げている。今日子では役不足だと見ればすぐに分かってしまう。拭いきれない過去の傷が歯止めをかける。
「俺の女は綺麗じゃない、愛らしくて美しい人だ。全然次元が違う。今日だって、お前のこの透き通るような肌を見せたくなくて、カーディガンを着せたんだ。なんで、そんなに胸元があいてるんだよ。ちょっと目を離すと、デパートで男の店員に話しかけられてばっかりで。化粧品売り場にいた男だってお前の髪にいいオイルがあるからなんとか言って、触ろうとしていただろ。そんなことさせない。お前は誰にも触らせないんだ。……俺よりお前の方が魅力があるんだぞ?」
「……部長、随分とよく私を観察していましたね」
今日子は、思わず感心してしまった。
「観察じゃない、俺の目に届かない所にいるのがイヤなんだ。今、言っておく。俺は今日子限定だが、独占欲が強くて、やきもちやきだ。覚えておけ」
「……はい」
今までの気分は何処へ行ったのか、噴出して、笑ってしまった。
「そうだ、いつも笑っていろ。お前は笑顔が似合うんだから」
頭を、引き寄せ軽くキスをした。
今日子は胸が苦しかった。だが、後藤のこの言葉につかえていたものがすっとなくなっていく。今日子にとって後藤は救いの神なのかもしれない。
「はい」
「もう、大丈夫か? 行こう」
「はい」