とても恥ずかしい初めての食事は終わった。
食後に後藤が淹れてくれたコーヒーを飲みながらソファに並んで座る。

「こうやって食事をするのも初めて?」
「はい」

今日子の肩に腕を回しこめかみにキスをした。後藤は今日子を離さず、ずっと傍から離れない。そして、何かにつけ唇を奪って行く。
こんな風に甘い後藤を、部署の女子社員は知らない。

「部長」
「ん? どうした?」
「今日、給湯室で……」

今日子は給湯室での出来事を話し始めた。
今日子は、午後のお茶に合わせ、コーヒーを落としていた。
そこへ、各々のカップを持った女子社員がやって来た。

『ねえ、後藤部長のあの仕草みた? 長い脚を組んで、肩ひじついて、こめかみに指を置く。そして、名前を呼んで指で来いと合図する』
『あ~見た見た。あれってちょっと凄すぎだよね。絶対に普通のおじさん上司じゃ真似できないもの』
『そうそう、あたし、後藤部長に怒られたら悩殺よ。怒られたいわ』
『やっぱりさあ、彼女いるわよね』
『彼女じゃなくて、一晩の相手だったりして』
『いやあ、その相手にも困らないんじゃないの?』
『後藤部長だったら、一晩の相手でもいい』
『ねえ、プライベートの部長ってどんなかしら』
『さあねえ、俺様じゃない?』

後藤は、赴任先から本社勤務になったとたんに噂の人となっている。
その容姿と仕事の出来ることで、有名人となった。
今日子にもこんなこと以外に、たくさん後藤の話は耳に入っている。それを後藤に話した。