メガネをかけているのに気が付き後藤は取った。
メガネの下にある、綺麗な瞳が後藤を見つめる。

「……植草先生に私は恋をしているのだと言われました。恋をしているかどうかもわからない30女なんです。それに私は醜く、他人と交わることもしない孤独が好きで、友達もいないし、つまらない女なんです。人から煙たがられている人間なんか、部長にはふさわしくありません。部長にはもっとふさわしい人が……」

言い終わらないうちに、後藤が今日子を引き寄せ唇を重ねた。
長いキスだった。柔らかくあたたかいキスだった。体を血が駆け巡るとはこのことかと、今日子は知る。腕を首に回して、身動きできないように惹きつける。顎を掴み、逃げられないようにもした。初めての今日子には、刺激的すぎるキスが繰り広げられた。
そんなキスで、どう息をしていいか分からず、後藤の胸をトントンと叩く。
ようやく唇が離れると、発作の時の様にはあ、はあと息が上がった。

「く、苦しい」
「俺が惚れた女だ、醜いなんてことがある訳がない!お前の価値は俺が決めるんだ」

胸に手を当て呼吸を整えながら頷く。整えきらないまま、また、今日子の唇は奪われた。後藤の両腕で、がんじがらめになる今日子は、キスで、朦朧としてくる。やっと後藤の腕から解放される。

「ごめんなさい」

今日子は、後藤に優しく抱きしめられた。

「俺と初めての恋愛をしよう。今日子、お前を大切にするから」