リビングでせっせと仕訳をする。男兄弟がいない今日子は、男の人はこんなものだろうかと考えていた。
黙々と洋服を畳み、全てを片付けると、センスの良いソファとラグが現れた。

「やっと、ソファに座れますね」

今日子は自然と笑った。自分でも長いこと忘れていたくらい、満面の笑みだった。

「!!」

突然、後藤は今日子を強く抱き締める。抑えていた感情を爆発させるかのような、抱擁だ。
ずっと今日子を見てきた後藤は、それが作り笑いでもなく、本当の今日子の笑顔だと分かった。本当にきれいな笑顔だった。
後藤の鼓動が伝わるくらい密着している。

「好きだ。お前がずっと好きだった。ずっと俺の傍にいろ。俺が、何があってもお前を守る。発作も治してやる。だから傍に居ろ。もう離れていたくない。いや、離さない」

傍にいる。と、今日子が信じるまで言い続けると言った後藤はその言葉通り、何かにつけ言い続けてくれていた。
疑っているのではない、勇気がないだけだ。傷つくのが怖いだけだ。

「ぶ、部長……」
「言ったよな、お前に会うために脇目も振らず仕事をして転勤期間を縮めて帰ってきたと。もう限界だ。よく3年も我慢したよ。学生の恋愛じゃあるまいし」
「……はい」
「お前はどうなんだ? ん?」

今日子を離し見つめる。

「あ、あの」
「ん?俺は、うぬぼれているのか?」