慌てた様子で、散らかっている衣類をまとめ始めた。
会社での後藤のデスクは整理整頓がなされ、仕事の同線がきっちりと出来ている人だ。
プライベートな部分を垣間見られて、少し嬉しい。完璧だと思っていた後藤にも、弱点があったのだ。きっと、 仕事に追われて、家の中の事までは手が回らないのだと理解する。

「ちょっと待ってください。ご飯を仕掛けたら私が畳みますから」
「う、うん」

いつもの強気の後藤は何処へやら、ちょっと情けないところも見られて、今日子は嬉しそうだ。
ご飯を仕掛けると、洋服を畳み始める。

「部長、洗濯するものと洗濯済のものを分けて下さい。あ、部長、お着替えになったらいかがですか?」

まだ、後藤はスーツを着たままだった。
今日子は、ネクタイを外し、スーツの上着を脱ごうとしていた後藤の背中側に回り、着替えの手伝いをした。

「計算していないところが、心配なんだよな」

自然と出来ることではない。今日子の素質がそうしているのだが、気配りが出来る女は、そういない。そこが男にヒットしてしまえば、ライバルが出来てしまうのは必然になってしまう。後藤は、内心ヒヤヒヤしている。

「ありがとう。これが毎日続くとうれしいんだけど?」
「え? あの、えっと」

それはどういう意味なのか。普通に考えればまあ、察しがつくところだが、深く考えないように片付けの続きを始めた。
 汚れ物も洗濯済の物も一緒になっている。まさに、こんもりと言う表現がぴったりだ。

「えっと、分別してください」

今日子は、あわててその場を繕った。

「うん」