「何かおっしゃいましたか?」
「ん? いや、何も……さ、行くか」

二人で手を繋ぎ、スーパーで買い物を再開した。先ほどのような視線はもう感じられなかった。後藤の言葉が今日子を解きほぐし、視線を感じることはなかった。
メニューは暑いので冷奴と、夏野菜とチキンの煮込み、味噌汁にした。

「食材の種類を多く買ってしまって料理をしないのに、余ってもしかたないですね」
「腐る前に、作りに来てくれればいいじゃないか」

 後藤の言葉で、次があることに今日子はとても嬉しかった。
 買い物の最中も、今日子が以前とは違う意味で顔をあげられなくなっていた。
 後藤のスキンシップが過剰なのだ。カートを押す今日子の腰に腕を回し、後藤に引き付ける。熱い視線で見つめたり、商品を選ぶ今日子の背中越しに抱きしめたりしていた。
 今日子は、たぶん見たことがないくらいに赤面していただろう。後藤は、そんな今日子の様子を楽しむように、過剰に接していた。
 後藤には今日子の発作の心配がなかった。絶対に大丈夫だという確信があったのだ。そうでなければ、こんなことは出来ない。

 「気分がいいな」
 「え?」
 「お前とこうして居られて気分がいい」
 「えっと……あの」

 戸惑う今日子に追い打ちをかけるように、後藤は今日子の頬を撫でた。
スキンシップがどんどん過剰になっていき、今日子は恥ずかしさの限界だ。
これ以上赤くなれないと言うくらいに、顔は赤い。
そんな今日子を後藤は可愛くて仕方がない。