そう思いながらまた新しい煙草に火をつけた。
口元が無意識に綻んでいたことに気付き、うん、やっぱり悪くねぇな、と改めて思う。

クン、とたまに鼻を鳴らしながら寝息を立てるショコラの寝顔を見る。
なんだかモヤモヤするような、もどかしさも確かに残ってはいるけれど、俺の心は今、穏やかだった。

焦らなくてもいいか。
きっと大丈夫だ、彼女とは。

たった一度デートをしただけで、何の根拠もないくせに。
だけど、自然とそんな考えが芽生えている。

この分なら、二度目のデートをするのもきっとそんなに先のことではない。
誘いさえすれば、彼女は嫌とは言わないだろうという自信はある。
そうしてゆっくりでいい、お互いを知っていこう。
彼女が安心して、もう少し俺に心を開いてくれるようになったら、その時にもう一度きちんと話をしよう。

うん、それでいい。


自分に言い聞かせるようにしながら、俺は考えていた。


2本目の発泡酒を取りにキッチンへ立ちたいけれど、ショコラの寝顔があまりに気持ち良さそうなので動かすことを躊躇っていると、携帯が震えた。

彼女だ。


そう思いながら見た液晶に表示されていた名前は、予想とは違っていた。

落胆し、そして一瞬迷いもしたが、通話ボタンを押した。