だからか。

あっという間に空になった発泡酒のアルミ缶をぐしゃっと握り潰すと、俺のあぐらの間に挟まってうとうとしていたショコラがビクッと頭を持ち上げた。

「ごめんな、びっくりしたな」

そう言って頭を撫でてやると、キョロキョロと首をせわしく左右に動かしていたショコラはすぐに落ち着きを取り戻し、また俺の太ももに頭をのせてまどろみ始める。

だからだったんだ。

俺が今まで出会ったり、触れ合ったりしてきた女とは、違う。
だから俺も、今まで何食わぬ顔でできていた筈のことが、彼女の前だとできなくなる。

今日初めて、あれだけ長い時間を2人だけで過ごしてようやく少しはいつもの俺らしく振る舞えるようにはなった。
最初に出会った頃の、彼女を目の前にした時の俺の緊張といったら、初めて彼女ができる前の中坊の俺でももう少しうまくできてたんじゃないかと思うほどだったから。

それに、今回のデートの感触だって、決して悪くはない。
彼女は頑なな態度ではあったけど、楽し
かったと言って笑ってくれた。
俺の言葉を、嬉しいと言ってくれた。
それだけで、まずはよしとしよう。
こうしてメールだってくれたことだし。

と、メールをもう一度開いてみる。

なんて、高校生に戻ったみたいだ。
最近、こんなふうに誰かからのメールを読み返したりなんてしたことなかったよな。

ダサいけど、久々にこんなのも悪くないか。