「でも、そしたら今度は、なんかただの嫌な奴になっちゃって。しかも怪しいし、印象には残ったかもしんないけど、悪い印象ばっか残したところで意味ねぇじゃんって思って。すぐ謝りに行って、今度はちゃんと話そうとしたんだけど、なんかいざ面と向かってみたらめちゃくちゃ緊張して、うまく話せなくて」

電話で話した彼と、実際に対面したときの彼の感じは明らかに違っていて、戸惑ったことが思い出される。
あれは、そういうことだったんだ。

「…っていう、ダサい話。以上」

結局、かき氷はぜんぜん食べられなくって、あたしの手元のカップの中には、白く濁ったイチゴ色の水が残っている。


「…続きは…?」
「え?」
「その、続きは?だってさっき、『今までずっと』って…」
「んー…」

彼は語尾を伸ばしながら、あたしのカップを奪うと、煙草に火をつけた。

「デート、もし、ほんとにしてくれたらちゃんと言おうってのは決めてたからね。で、昨日の夜とか、さっき車ん中でも、今かき氷食ってるときも、なんて言おうかなってずーっと考えてたんだけど。なんつーか、うまい言葉ってやつ?でも、出てこなかったから。好きってこと以外、なんもないなって」