あまりにも、唐突だった。
あたしは、瞬きも忘れて彼を見ていた。


「あれ?そんなビックリするとこ?だってもう散々言ってんのに、今更?」

彼は天真爛漫に言う。

「あー、ほら、溶けちゃうじゃん。かき氷」

あたしのカップに半分くらいあった筈のかき氷は、すでにその半分くらいが赤い水に姿を変えている。

「食いながら聞いて」
「そんなこと、言われても…」
「いや、マジで。そんなじーっと見られると、俺も喋れないからさ」

そう言って彼が、ちょっと困ったように笑うので、あたしはかき氷をすくい始め、左側から聞こえる彼の声に耳を傾ける。


「ずっと、考えてた。なんて言えばいいかなって。携帯拾った時からずっと、今まで」

話が、思っていたよりも遡り始めたことに少し戸惑いながら、次の言葉を待つ。

「携帯拾ったとき、すぐにその場で声かけれなかったのは、だからだよ。落としましたよっつったら済む話だったんだろうけど、そしたらありがとうございますってなって、それで終わりじゃん。それが嫌だった」