かき氷をシャリシャリいわせながら、彼は言う。
諦めて財布をバッグに戻すと、あたしも黙ってイチゴミルクをせっせと口に運ぶ。

「あ」

独り言のように彼が言ったので、手を止めてその横顔を見た。

「そろそろ、沈みそう。夕日」

その言葉に促されるようにして、前を見た。
水平線のブルーに、少しずつ溶け出していくオレンジ。
水面にキラキラ跳ねる、光の粒。


「…きれい」
「うん」


見渡すと、家族連れはもう殆どが撤収し始めていて、ぽつぽつと砂浜に開かれた
色とりどりのパラソルの下に見えるのはカップルばかりだった。

さっきの海の家のお兄さんにも、今まさに横を通り過ぎた、小学生くらいの子供を連れた夫婦にも、きっとあたしたち2人もそのうちの一組だと思われているんだろう。


「…俺さ」

夕日に見入っていると、ちょうど半分くらいが海に隠れたところで、彼が不意に口を開いた。
ブルーハワイは、もう空になっている。


「好きだよ、彩乃ちゃんのこと」