「いらっしゃい!どれにする?」

夏もまだ幕を開けたばかりと言うのに、すでにこんがりとよく日に焼けているいかにもサーファーといった出で立ちのお兄さんに訊かれ、彼はブルーハワイを頼んだ。

「彼女は?」
「えっと、じゃあ…イチゴミルクで」
「はーい。ちょっと待ってね」

お兄さんから2つのかき氷を彼が受け取ると、あたしの掴まる手がなくなってしまった。
それには彼もすぐに気付き、あたしにイチゴミルクのほうを手渡すとまた空いた手で、今度はあたしに何も訊かずに手を取った。

少し歩いたところで、駐車場から砂浜へ続く石段が見えたので、そこに座ってかき氷を食べることにした。


「うん。うまい!今年初だー」
「あたしもです。かき氷も、海も」
「マジかー。うまい?イチゴ」
「はい。あたし、昔からかき氷はこれなんで」
「わかる!俺も絶対コレ」
「あ、あたし、お金」

そう言って、バッグから財布を出そうとすると彼は言った。

「何言ってんの、こんくらい」
「いえ、でも。マックも出してもらったし…」
「いーらーなーいー」
「でも…運転も、してもらってるし。ガソリンとか…」
「ほんと、いいって。付き合わせたの、俺だし」