片方のサンダルを脱いで、恐る恐る砂に爪先をつけてみる。



「あー、無理だって言ってんのに」


戻ってきてくれた彼が、笑いながら言う。


「置いてくわけないじゃん。あー、じゃあさ、わかった」



彼はそう言って、もう一度手を差し出した。


「嫌かもしんないけど、俺が心配だから、ちょっと我慢してここ、掴まってくんない?」


サンダルを履き直して、あたしは何も言わず、その手をとる。
思ったよりもゴツゴツと骨張っているそ
の手は、当たり前だけどあたしのそれよりも随分大きくて、自分のくだらない強がりが物凄く恥ずかしくなった。


「…ごめんなさい」
「んー?なにがー?」


何も気にしてないけど、とでも言いたそうな口調で彼は言う。

「ありがとうございます」
「ん。そのほうがいいや。ごめんなさいより」


握った手から伝わる温度に、あたしの心は揺れている。
そんな筈はないのに、さっき足先で触れた太陽に熱された砂よりもっと、熱い。

「あ。あれ食わない?好きなんだよねー、俺!」

そう言って彼が指差したのは、すぐそこの海の家の軒先に立てかけられた「かき氷」ののぼりだった。

「あたしも、好きです」
「じゃ、行こ!」