どんなに好きになっても、相手も同じように自分を想ってくれるわけではない。
本音は、好きで、好きで、大好きで、離
れたくはなかったけれど、もう気持ちが
離れている相手にそれを言ったところで何が変わるわけでもないと思ったから。

誰かに恋をするという気持ちや、片想い
の切なさ。両想いの幸せ。別れのあとの、虚しさ。
そういう全部を教えてくれた、ひとつの恋を失ってから、あたしは今でも、新し
い恋をする気にはなれずにいる。

陽菜はそんなあたしを見て、「まだ引きずってるんだね」と言う。
そんなふうに見えるのは仕方がないし、自分でもうまく説明ができる自信がないから、そういうことにしているけど本音は違う。

あたしをあたしでなくしてしまうような、恋をしてる最中のあの感覚が、苦手だと思ったのだ。
アイツと付き合ってる毎日、楽しかったのは確かだけど、常にその感覚が付きまとっていて、疲れるなぁって感じていた。
他の感情なら、自分で上手に処理ができ
るのに、恋愛感情だけはそうはいかない。

だから、恋をするのは、怖い。

恋さえしていなければ、割と心はいつも
穏やかでいられるし、誰かの感情だったり行動だったりに一喜一憂したりする必
要もない。

あたしは、そのほうがいい。
またあの感情の渦に飲み込まれてしまうくらいなら、このままでいい。

だから、マズイのだ。

また、恋に落ちてしまいそうな気配に、あたしは期待よりも不安を感じている。

でも、彼に会うのは嫌じゃない。
むしろ、やっぱり、楽しみだと思う。

矛盾だらけで、どれが本当の本音なのか、自分でもわからない。
明日彼に会ったら、その答えが見えるのだろうか。