「明日は、一日中平気なの?」
「……………はい、まぁ」


彼との約束のために一日空けておいたと思われたら嫌だと思ったので、適当な嘘をつこうかとも思ったけれど、やめた。
あたしは嘘をつくのが下手だ。

「じゃあ、そうだな、2時くらいとか、どう?」
「大丈夫です」
「足、もう治った?」
「おかげさまで」
「そっか。んじゃ大丈夫だね。じゃあ、渋谷あたりでどう?」
「わかりました」
「ん。じゃ、明日ね。ハチ公んとこで」
「はい」

会話が終わったのに、彼がなかなか切らないので、あたしが先に切った。
たぶん、彼はそれを待っていたんだと思う。

電話がちゃんと掛かってきたことに、そ
してその電話で、あるかないかわからないようなものだった約束がより具体的になったことに、あたしは安堵している。
安堵と共に、かすかな胸の高鳴りも胸に拡がり始めている。

やっぱり、ヤバイんだけど、な…。

そう思いながらもあたしは、扉が開きっ
ぱなしのままのクローゼットの前に立って、下着を出すより先に明日のコーディネートを考え始めている。
この前会ったときは、ショートパンツにレギンスの、カジュアルな感じだったから、今度は少しイメージを変えて行きた
いな、なんて思ったりしている。

まだ買ったきり一度も着ていない、花柄のワンピースを手に取って、姿見の前に立ってみる。

ラインがタイトだから、もう少しダイエットしてから着ようと思ってたんだけど…。