男はなおも、笑いを噛み殺しながら続ける。
「まぁ、それじゃあ仮にこれが君の携帯だとして」
「仮にじゃなくて、そうなんです」
まどろっこしい男の物言いに、あたしの苛立ちは増すばかりだ。
変な男に拾われてしまった。
関わり合いになるのも嫌だけど、だからと言ってここで電話を切ってしまうわけにもいかない。
まだ買って3ヶ月も使っていない、最新のスマホを諦めることはできない。
「ただで返すってのもなんだから、条件ね」
「…条件?」
嫌な予感がした。
なんとなく、その先に続くであろう言葉が、読めてしまった。
「俺とデートしてよ」