そりゃあテンパって、日本語おかしいけど、そんなに笑わなくたっていいんじゃないの?
初対面、というか、正確には対面はしてないわけで、いわば見ず知らずの相手に対して随分失礼なんじゃない?
なんのご用もなにも、その携帯持ってる時点で察しはつくでしょ?

男の不躾さに対する苛立ちが、あたしを少し冷静にさせた。

「こちらこそ、焦っていたのでごめんなさい。椎名彩乃と申しますが、その携帯あたしのなんです。拾っていただいたんですよね?」

失礼とは言え、携帯を拾ってくれたのであれば恩人には違いない。
あたしは声に苛立ちが滲まないよう、ゆっくりと丁寧に話した。

「へぇ、そうなんだ。まぁ確かにこの携帯は俺のではないけど」
「はい、だから、あたしのなんで」
「証拠は?」
「はい?」
「これが君の携帯だって証拠」

何言ってんの?

「いえ、だからこうして電話してるじゃないですか」
「番号知ってるくらいじゃ証拠にはならないでしょ?」
「そんなの…!じゃあ、どうしたらいいんですか?」

なんなの、こいつ。