ただの友達だよ。
同級生なんだ。
悩みがあるから相談乗ってくれとか言われちゃって、断りきれなくてさー

適当にこの場を取り繕うだけの嘘なら、どうにだって言えるだろう。
だけど、今ここで更に、彩乃に対して嘘を重ねることは、したくなかった。

ミナミの存在や、俺たちの関係を洗いざらい明かすことで、もしかしたら彩乃をもっと、傷つけてしまうことになるのかもしれないけれど。
でも、どちらにしても傷つけたり、泣かせることを避けられないのだとしたら、嘘よりも真実のほうが、きっといい。
…きっと。

彩乃の目が、再び俺を捉えた。
俺は、全てを話す決意をして、その眼差しを受け止める。

「もう、3年以上前に別れてる。今だってもちろん、会ってた、ってこと以外、何もしてない。会ってたこと自体、ダメなのはわかってんだけど…でも、そういうふうに彩乃が思ってるとしたら、違うから」
「……どうして、会ったの?」

彩乃の瞳は、まだ潤んではいるものの、今にもこぼれ落ちそうなほどの涙は、そこにはもうない。
俺は胸を撫で下ろしながら、次の言葉を探した。

できるだけ、正直に、事実に忠実に。
だけどできるだけ、彩乃のショックを最小限に抑えられそうな言い回しを、決して多くはないボキャブラリーからかき集める。