あたしは、昨日の拓真との時間を振り返ってみる。
お互いにその日にあった出来事を喋って、同じTVを見て笑って、ショコラと遊んで、抱き合って眠った。

「今日何してた?」
という質問に、拓真は、
「特に何も。昼まで寝てて、ダラダラしてた。あとはショコラの散歩行ったくらい」
と、答えたのだった。

陽菜が見たのが本当に拓真だったのなら、拓真は少なからずあたしに嘘をついたことになる。
ショコラを散歩に連れて行ったこと自体は事実だから、嘘というよりは隠し事、と言ったほうがいいかもしれないけれど。

どちらにせよ、拓真はあたしにそれを言わなかったのだから、それはつまり

言いたくない、間柄ってこと。
なんじゃないかー


「彩乃?大丈夫?」

陽菜の声で、ハッと我に返る。

「あ、ごめん…ぼーっとしちゃった」

陽菜はいかにも心配そうに、綺麗なアーチ型に描かれたブラウンの眉をしかめる。

「ちゃんと、確かめたら?拓真くんに」
「…うん。そうする」