思わず声を荒げた俺を、ビクッとしながらショコラが見上げた。

胸が、ざわつく。

「…ごめん。でも、もう、本当に無理なんだ」

正直なところ、俺は、揺れている。
それを隠したくて、俺は煙草を取り出した。

「…会えない。これ以上は」

彩乃のことが、大切だ。
大好きだし、彩乃といるときにミナミを想ったりしたことなんてない。
…これまでは。

ミナミのことは、完全に忘れたはずだった。
自分を捨てて、他の男のもとに行った女だ。
最初こそ未練はあったし、引きずりもしたけれど、時間はかかったものの、自分の中で整理をつけた。
その筈だった。

けれど、ミナミを好きな気持ちが薄れて、ようやく違う恋に踏み出すことができて、彩乃に対する気持ちがどんなに膨らんでいっても、どうしても消えない想いがあった。


“なぜあの時もっと、ミナミのことを支えてやることができなかったのか”