ミナミと出会った時、俺はまだたった18だった。
俺よりも、心身共に大人だったミナミとの差を埋めたくて、俺はいつでも背伸びをしていた。

自分1人の食事は極力質素に済ませて、ミナミと出かける時は、密かにリサーチした中目黒や恵比寿なんかの洒落た隠れ家的なレストランへ。
バイト代を必死に貯めて、ブランド物の財布やアクセサリーなんかを記念日には必ずプレゼントをした。

別にミナミが高級志向な女だというわけではない。
ただ、まだガキな俺が、大人の男が好きな女にどんなことをしてやるのか、を馬鹿な頭で考えた結果がそれだった。

付き合って1年以上経った頃に、もう無理してまでそういうことはしないで欲しいと、半ば怒りながら言われて俺はようやく自分の空回りに気がついた。

それまでも、それを匂わせるような発言は何度かあったのだけど、ただの遠慮で、建前としか思っていなかった俺は相当なショックを受けた。

でもあのときミナミは言ったんだ。


「そんなことで繋ぎとめなくても、あたしはもう、ちゃんと、ずっと拓真のものだから大丈夫よ」