「え?」

不意に言葉を遮られ、反射的にミナミを見ると、彼女は不適な微笑みを見せた。

「それならどうして、会ってくれるの?いつも、嫌だって言わないじゃない。会うたびこんな話するあたしのことが面倒なら、電話に出なきゃいいじゃない」
「…………」
「そうしたら、諦めるよ。たぶんあたし。でも…こうして会ってくれる限り、期待するよ」
「今日は、お前がどうしてもショコラに会いたいって…」
「そんな嘘くさい口実、見抜けないほど拓真はバカじゃないって知ってるよ、あたし」

ふふ、と、ミナミは笑う。

その通りだった。

ミナミはおそらく、何もかもわかっている。

俺がミナミのことをどれだけ好きだったか。
一方的な別れを告げられた俺がどれだけ傷ついたか。
そして、それから立ち直るまでにどれほど苦しみ、悩んだか。
俺がどんな想いで、ミナミと別れてから今日までを過ごしてきたのかを。

何もかもを見通しているからこそ、ミナミは俺に連絡を寄越したりできるのだ。

俺が、ミナミを無視できないことは、ミナミ自身が誰よりもよくわかっている。

そしてミナミにはたぶん、自信があるのだ。
ミナミの願いを、俺が聞き入れないはずがないと。