思わず漏れたその声が、自分のものとは思えないほど甘ったるくて、あたしは驚く。

彼の指や、舌の動きは、またあたしのその声を誘い出すけれど、あたしはそれを喉の奥で飲み込もうとした。
だけど時々、どうしても少し漏れてしまうそのくぐもった声を隠すみたいに、自分の手の甲で唇を押さえつけていると、彼は言った。

「なんで、我慢すんの?いいよ、声出して」
「だって…」

恥ずかしい、と言う前に、彼はあたしの耳元で、囁く。

「可愛いから、もっと聞かして」

いつもよりも、低い、声。
耳元に触れた息は、あたしの背中をざわざわと泡立たせて、唇からは、さっきよりも更に高い声が、漏れ出す。

初めてされることばかりなのに、あたしの身体はきちんと反応を示している。
それは、あたしがちゃんと「オンナ」で、彼が「オトコ」だから。

下から見上げる、オレンジの薄明かりの中の彼の表情は、いつもと違って見えるけれど、きっと彼が見下ろすあたしも、同じようにいつものあたしとは違って見える筈だ。
親にも、お兄ちゃんにも、陽菜にも見せたことのない姿。
それを知っているのは今、彼だけ。

彼の手は太ももを撫で、デニムのミニスカートをめくり上げる。
どこかにまだほんの僅かに残っていた羞恥心は、いつの間にか姿を消している。

彼の手に、唇に、体温に溶かされたあたしの意識は、冷静な思考能力なんてもう手放してしまっていた。