唇を重ねながら、彼に半分抱きかかえられるようにしながら後ろ向きに歩いていると、ふくらはぎの裏に固い板のような感触があって、そのまま彼に促されるようにして腰を掛ける。
そのふかふかした感触で、そこがベッドだとわかる。
大人の男の人は、みんなこんな風にキスが上手なのだろうか。
キスなんて、優弥と彼のしか知らないあたしにも、わかる。
ただ唇を重ねているだけで、気持ちいい。
一生懸命に、彼の動きに合わせるようにして舌を絡ませてみる。
こんな激しいキスはしたことがなくて、これで合ってるのかどうかは、わからないけれど。
気付いたときにはあたしはベッドの上に寝かされていて、そこに覆い被さるかたちであたしを見下ろす彼がいた。
次第に唇を離れて首筋、そして鎖骨へと場所を変えて、あたしに降り注ぐ、キスの雨。
そして今まで、あたしの髪や頬を撫でていた彼の手が、胸元へと移動する。
「ちょっ…」
誰にもされたことのない場所へのキスでモヤがかかったようになっていたあたしの意識が、その初めて感じる感触で少しだけクリアになる。
「なに?」
「ちょっと、待って…」
「なんで?」
「わ、わかんない、けど…」
喋りながらあたしは、いつの間にか少し息が荒くなっていることに気付く。
あたしの言葉を聞くと彼はふっと笑って、あたしの髪を優しく撫でた。
「ごめん、もう待てない」
そう言うと今度は、おでこに一瞬触れるだけのキス。
「だってもう、いっぱい待ったもん」
そう言うやいなや、無意識に胸を覆うように置いていたあたしの両腕を、ゆっくりとそこから引き離した。