世間では、もうすぐバレンタインデー。


先生を好きになる前まで、バレンタインデーなんて、私には関係ないイベントだと思っていたけど、はりきってずっと前から準備万端で買ったチョコレート。


もちろん、先生に。



くるみに『それくらいしなきゃダメ!』って言われて、カードも入れた。


“先生大好き”っていうシンプルな内容。



喜んでくれるかな。




そして、バレンタイン当日の昼休み。


先生には何も言ってないけど、早く驚く顔が見たくて、先生のクラスへ急ぎ足で向かった。

一人でニヤニヤしながら、廊下を歩く。



「先生!!これ、もらって下さい!!」



先生の周りには、すでにたくさんの女子生徒たち。


みんな、先生にチョコを渡しに来たんだ。


義理じゃなくて、本命の子もいるよね。


奥さんがいるとか、子供がいるとか、恋しちゃえばそんなの関係ないもん……。



「お~!ありがとな!」



笑顔でチョコを受け取る先生に、なんだか胸がモヤモヤした。


この気持ちは……何?



先生にチョコをあげる、たくさんの生徒の中の1人になりたくなかった。


あんなにチョコもらえるんなら、私のはいらないよね。



私は黙って教室へ戻った。