「先生と夏休みに会えるように、何か借りたら?」
くるみが、夏休みを恐れる私に、そんなことを提案した。
夏休みのはじめにあるコンクールを最後に、私は吹奏楽部を引退する。
大好きだったサックスとも、
大好きだった音楽室のベランダから見える先生の姿とも、
これでさよなら。
このまま何もしなかったら、本当に夏休みは先生に会えなくなってしまう。
私から近づかないと、先生は簡単に遠い人になってしまうんだ。
先生から私に会いに来るなんてことは、絶対にないから……。
そういえば、愛梨が先生を好きだった頃、先生が好きなアーティストの話をしていた。
先生の車に乗ったときも、そのアーティストの曲が流れていたような……。
そのCDでも借りようか。
うん、そうしよう。
先生と会えるなら何でもいい。
私は夏休み一週間前の昼休みに、くるみと先生のクラスへ向かった。