「今日、部活休み?」



先生が私に声をかけながら歩いてくる。

一歩一歩、近づいて来る。



困る。

もし愛梨に見られたらどうしよう。


でも、声をかけられたことに対して、とてもない嬉しさを感じていたことも確かだった。



「うん。大会続きで、今日は休みなんだ……」



視線を外して下を向く私の顔を、先生は不思議そうに覗き込んだ。



「また浮かない顔してぇ~!何かあったか?」



先生に甘えたくなった。

泣きつきたくなった。


でも、『先生のことで悩んでます』なんて、絶対に言えない。



「別に何もないよ!ちょっと疲れちゃっただけ!先生、早く部活に戻らなきゃ!」


「お~。それならいいけどさ。じゃ、気を付けてな!家帰ってゆっくり休めよ!」



数分前に見ていた位置へ戻る先生。

その斜め後ろから、動けない私。


そして、どんどん遠ざかる先生と私の背中。


私は、泣きながら帰りの坂道を歩いた。