ある日の放課後。


ここのところ大会続きで、今日は部活がなかった。



「桜、ちょっといい?」




愛梨が、帰ろうとした私を引き止めた。



嫌な予感がした。



積み重なっていた不安。


無理矢理押し込めていたものが、溢れ出す。



私の予感は的中した。




「私、城島先生のこと好きなんだ」



やっぱりどこかで心の準備をしていたのかもしれない。


不思議なことに、あまりショックは受けなかった。



「付き合いたいとかそういうんじゃないよ?奥さんも子供もいるし、仲良くなりたいなぁ~って思ってるだけ!桜、協力してくれる?」



慌てて私に説明する彼女を、かわいいと思った。


私も同じことを思っている。


私も愛梨と同じ気持ち。


でも、『私も先生が好き』なんて、到底言えない。



愛梨は少し緊張を帯びた表情で、私の返事を待っている。



「うん、いいよ……」



そう言った瞬間、愛梨の表情がぱぁっと明るくなった。



「ありがと~!桜大好き!」



抱きついてくる愛梨に、私はただ笑顔を向けることしかできなかった。