「桜。お願いだからちゃんと食べて」


ドアの向こうから聞こえる、お母さんの声。


「ごめん、いらない…」



私は最近、何も食べていない。


体重はひどく落ちて、見も心もボロボロになってしまっていた。



先生が元気なら、それでいいの…

先生が幸せなら、それでいいの…



叶う保証も何もなく先生を想い続けていた昔の方が、もっと辛かったはずなのに、どうして今の方がこんなに辛いんだろう…。



もういっそ、先生のことを何もかも忘れてしまいたいと思った。



幸せだった教育実習の日々。

はじめてひとつになったあの夜。

先生から受けたたくさんの愛。



毎日毎日過去を思い出し、浸る。




苦しくて、辛くて、耐えられない。



私の妄想の中で、生きる先生。






「ひろと……」




何度呼んでも、足りない名前。



私、このまま先生なしで生きられるかな…。