その日の夜は、先生の好物のパスタを作った。
美味しいって食べてくれる先生が、とても愛しい。
でも、その先生の笑顔に、先生の別れた奥さんと子供さんの顔を、重ねずにはいられなかった。
私はある決意を胸にして、先生に話を切り出した。
「先生……」
「ん、どうした?まぁた元気ない顔してぇ~!」
先生はそう言って、元気のない私の頭を、くしゃくしゃっと撫でた。
でも、私の決意は揺るがない。
「……別れて……」
そう言葉にした途端、部屋の空気が凍りついた。
先生が寝ている間に家を出ようとも思ったけど、奥さんが先生にしたことを、私がまた繰り返して、先生を傷つけたくなかった。
できるだけ先生を傷つけないようにと、精一杯考えて出した私のやり方だった。