「俺に3人目の子供できたって言ってたの、覚えてる?」
「うん…」
覚えてるよ。
忘れるはずがない。
バカだけど、何回も泣いたんだよ。
子供って、2人が愛し合って生まれるんだもん…。
先生が愛する人は世界に1人しかいないって、改めて分かって切なくなっちゃったんだ。
「その子供がさ、俺とあいつの子供じゃなかったんだ。あいつが母子手帳、絶対俺に見せてくれなくてさ。俺、こっそり見ちまったんだよ。そしたら、血液型がちげえんだもん。びっくりしたよ!そんで、それあいつにバレちゃってさ、その次の日に起きたら、もう家に誰も居なかった。」
笑って話す先生。
そんなの、絶対辛いよ。
無理して笑わなくていいよ、先生…。
「ごめんね、変なこと聞いちゃって…。」
「ん?全然。桜、またお前は…。」
そう言って、再び私の頬にふれる先生。
私は、自分でも知らずのうちに涙を流していた。
「私、ずっとうらやましかった。先生に愛されてる奥さんが…。生まれ変わって奥さんになりたいって、何度も思ったんだよ。今だって、ずっと…。なのに…。先生、あんなに奥さんも子供も大事に大事にしてたのに……。」
私のこの言葉で、先生は私の気持ちを知ってしまっただろう。
今も先生を想い続けていることを…。
運ばれてきた先生のペペロンチーノと私のカルボナーラが、机の上に仲良く並ぶ。