「先生の奥さんと子供さん、元気?」


私も、もう大人になった。

あんなに辛く思ってた先生の奥さんと子供さんのことが、今ではいい思い出って思える。


先生は、前と同じように満面の笑みで答えるのかと思ったら、ちょっと寂しそうな顔で笑った。



「出てったんだ」



先生のその言葉に、言葉を失った。



どうして?


何で?



あんなに愛していたのに。

あんなに大事にしていたのに。



先生は、授業で奥さんと子供の話を何回しただろう。


優しい先生は、私の気持ちを知ってからその話をしなくなったけど…。



奥さんと子供の話が出ると、すっごく笑顔になった。

見たことのない笑顔だった。


私がどんなに頑張っても、きっと先生をあんな笑顔にさせることはできない。



あの夏祭りで見た先生と奥さんは、素敵な夫婦だった。


今でも鮮明に覚えてる。



奥さん、どうして…?

どうしてこんなに素敵な人を置いて、出て行ったの?