「どうして?」
何も知らない芽衣が、私に問いかける。
「中学の頃の先生がそっちに離任してさ。その先生と色々あったんだよね。」
くるみが私の代わりにうまく事情を話してくれた。
芽衣はそれだけ聞くと、もうそれ以上深くは聞かなかった。
すっごく悩んだ。
とてつもなく感情があふれ出した。
会いたい、会いたい、会いたい。
『先生と話せない』なんて悩んで、ただ先生を見ていたあの頃が、今ではいとおしい。
もう話すことも、見ることもできない。
まだこんなに残ってる。
でも、これでいいんだ。
会いに行ったら、先生に引かれてしまうかもしれない。
ここまで来るか、って。
また先生への想いが溢れ出して、忘れられなくなることは分かってる。
分かっていながら自ら傷つくに行くの?
奥さんと子供がいる先生を、まだ追いかけるの?
もう、先生に別れを告げてしまったんだ。
もう、先生とさよならしたんだよ、桜…。