「おい、バカップル。
アイスを返しなさい、こら!」


「ほら、あーん」


私は凛子に自分のアイスをあげた。


満足そうに頷く。


愁はあげない、と断っている。


そんな光景を笑いながら見ていると、
ふと隣を通った人に目が行った。


「とく…ま?」


あれは、篤真だと思う。


後ろ姿がそうだ。


周りの人には見えていないみたいだし。


私は2人を置いて、
篤真らしき人を追いかけた。


追いかけていると、
職員通路の暗い道に入った。


「篤真っ」


「…ゆあ」


振り返った篤真は優しく笑った。


あのときの笑顔とはちがう。


何か距離を感じる笑顔だった。


「あ、あのね!」


「誰かが来たら大変だよ?
もう、戻った方がいいと思うぞ」


どうしてそんなこというの?


私は、泣きたくなるのを必死にこらえた。


篤真は顔を反らして通路を歩き出した。


「…俺は俺で父親を探す」