「あまり、外では俺と話さない方がいい」


「どうして?」


「他人から見たら、
お前は独り言を話しているようにしか見えない」


「そっか」


篤真なりの私に対しての配慮。


優しい人なんだな。


「あれ、結愛」


「愁!」


隣に住む愁は、唯一話せる男。


あ、篤真を除いて。


「どっか、出かけんの?」


「ちょっと…人捜しかなー」


「ふーん、誰を?」


「坂上真治さんってひと」


「…聞いたことないな」


「やっぱりないよね」


愁も私と同じくらいからここで暮らしている。


やはり、知らなかった。


「何で探してんの?」


「…死んでしまった人からの頼みモノ」


「は?」


「遺言…みたいなものかな」


「あぁ、なるほどな」


納得したように頷いた。


「母さんに聞いてみるよ」


「ありがとう」


「じゃ。これからサークルだから」


そう言って大学へ、去っていった。