「俺がその男に金を払うよ」


「えっ?」


「肩代わりしてもらった分を俺が払ってやるよ」


「ダメ!晴翔を巻き込むわけにはいかない」


「綾菜は男と別れたいんだろ?」


「別れたい。でも晴翔に迷惑かけたくない。彼には私からちゃんと話をして別れるから。お金も少しずつ払うようにするから……」


「その男はそういう話をして納得する人?」


「わからない……」



綾菜は首を左右に振る。


その時、綾菜の服の袖口から手首の少し上が見えた。


まさかな……。



「暴力振るわれたらどうするんだ?」


「えっ?」


「手首の少し上側、それアザだろ?」



綾菜が慌てて袖口を押さえる。



「このクソ暑いのに、長袖着てるし。男に暴力振るわれてるんだろ?しかも見えないところを。そんな男に話したとこで納得するとは思えないし、一対一で話をするのは危険だ。俺が話をつけるから男を呼び出して?」


「今日は、出張でいないの……」



あぁ、だからか。


だから保育園に蒼太を見に来れて、俺ともこうやって長時間話が出来るわけだ。


暴力を振るうような男だ。


もし男がいたら、そんなこと出来ないよな。