「その男は蒼太の父親になるって言ったのに、何で綾菜は蒼太を俺のことに連れて来たんだ?」
「やっぱり蒼太の父親にはなれないって……」
「はぁ?何だよ、それ……」
「自分の子じゃないから可愛がる自信がないって……。蒼太の本当の父親のところに預けて欲しいって言われて……」
じゃあ、最初から蒼太の父親になるとか言うなよ。
「で、お前はその男の言いなりになったってわけだ」
「私だって悩んだの……でも、借金を肩代わりしてもらってる負い目もあって……彼の言いなりになるしかなかった……」
綾菜はそう言って俯いてしまった。
「それで俺のことに蒼太を連れて来た」
綾菜はコクンと頷く。
「後悔してるんだろ?」
綾菜が顔を上げて俺を見る。
「蒼太を手放したこと。でもそうするしかなかった。だから俺が電話した時に、自分の気持ちを隠してあんなこと言ったんだよな?」
「うん……」
「バカ……」
「ゴメン……」
再び綾菜の目から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちていく。
「その男と、まだ一緒にいるのか?籍は入ってるのか?」
「籍は入ってないけど、一緒に住んでる……でも、もう別れたい……」
「わかった」
「えっ?」
綾菜は驚いた顔をして俺を見た。