「希凛ちゃん、フルーツ切ってきたわよ」
少しだけどんよりとした空気が流れる中、光くんのお母さんがジュースと、綺麗に切ったフルーツを片手に入ってきた。
慌てて立ち上がり、ジュースを持つ。
「あら、ごめんね。光、これ、希凛ちゃんが買って来てくれたの。2人でたべて頂戴ね」
テーブルに色とりどりのフルーツと、カルピスらしきジュース。
私達は光くんのお母さんが出て行って、しばらくテーブルを見つめていた。
「…希凛は?好きな人。」
「いない…かな。」
曖昧に答えて、私はフルーツを口の中に放り込んだ。
光くんもそれ以上聞いてこなかった。
優くん。
好きだから、こんなに苦しいのかな。
好きだから、こんなに醜いのかな。
あんな光くんの顔みたら、言えないよ、好き、なんて。
咲姫さんの名前が出たとたんに悲しいような愛しいような表情をした光くんの顔は脳裏に焼きついてはなれなかった。