「こんばんは。」

部屋の中に入って私は笑って見せた。

ベッドの上の戸部山くんは低音量で音楽を部屋に流していた。


「お見舞い、来たのか?」

「うん。風邪って聞いたから…」


「ありがとう。座って」


戸部山くんは枕元にあるミュージックプレイヤーのボタンを押して音楽を止めた。



すぐに沈黙が流れる。
戸部山くんは焦ったように起き上がった。


「靭帯、大丈夫か」


「うん。痛みはあるけど、もう引いてきたから」


戸部山くんは包帯の巻かれた私の親指を見つめる。
私はさっと親指をしまい、スポーツドリンクを差し出した。


「はい。」


「あ、サンキュ」


戸部山くんはスポーツドリンクを受け取り、少し飲んだ。

私は座りながらベッドの 上の戸部山くんを見る。

そしたら不意にドキドキしてきた。
よくよく考えれば、密室に2人な訳で。

しかも好きな人の部屋で。


私はカチッと音がなりそうなほどに固まった。