ニブチン…。
優くんの好きな子でニブチン。


誰だろ、本当。

「え、あー、今希凛といる。うん。あ、同じクラスの。おけ。今から向かうわ」

優くんは携帯で誰かと喋り終わったあと、「じゃな」と短く言って図書室を出ていった。



好きだから、か。

立ち上がり、図書室を出たとたん、メールの着信音がスクールバッグから聞こえた。


スクールバッグから携帯を取り出すと、日和ちゃんからメールが来ていた。

『今日、戸部山くん休みだったよー。風邪ひいたみたい。お見舞い行きませんか?』


戸部山くんという文字が私の指を動かした。


『わかった!行く!』


短く返信して、私は走り出す。

風邪、風邪…。


スポーツドリンクと、何か差し入れ買っていこう!!


下駄箱から荒々しく革靴をひったくり、学校を出た。