「…」

「…何か、ごめんなさい。面倒な事になっちゃって…」

病院に向かう途中、静かすぎて私はついそんな事を言ってしまった。
戸部山くん、怒ってんじゃないかな…とか思って。

「いや、別に。怪我、大丈夫?」

「あ、うん」

ちょっとだけ振り返った戸部山くんの顔は悔しいほどの可愛い無表情。
私より前をあるく戸部山くんだけど、やはり、彼の背は小さい。

何で、私はこの人好きになったんだっけ。
タイプとはまるで真逆なのに。

「心配しなくても俺の親父、結構腕いいから」

「別に心配とかしてないって…」

「いや、なんか不安そうな顔してたから…」

「あー…なんか、戸部山くんと一緒にいることとか全然ないから緊張しちゃって…ハハ。」

苦笑いしてみせると、戸部山くんは私の顔をチラッとみた。
そしてちょっとだけ目を泳がせた。

「俺も、あんまししゃべったことない奴といると緊張すっから…」

そう言ってすぐ、顔を赤くして、前に向き直ってしまった。
…照れてた?

今の、照れてたよね。

…可愛い。
新たな一面を知れて顔がニヤける。
…戸部山くんってシャイなんだ。