言い出すタイミングが掴めず、私はパスケースを見たまま固まった。

…やばい。

なんとかしないと…。

そう思いながらも体は言うことを聞かず硬直していた。

すると、彼はパスケースをさっと拾い、こちらに差し出す。


「これ…」


「あ…。ありがとうございます」


「…さっきからこっち見てたけど何かついてます?」


「や、えと…。受験生だなーって…。」


「あぁ…。高校受験です。」


「…。」


えと…


何て返事すればいいんだろ…。

「…大学受験大変ですね。」

…彼の一言にピキリと音がなりそうなくらい私の体が固まった。


大学…受験て。
…もしかして高3だと思われた?

誤解を解こうと、口を開こうとした時彼が立ち上がった。
驚いて、立ち上がった彼を見上げる。

「あ、えと…じゃ。」

彼は微妙な表情をして軽く頭を下げると、開いたドアからホームへ降りていってしまった。