「ねぇ、葉月君。」


「ん?」

今日は天気が良い。と言うわけで

カナと駅前のカフェに来ていた。

もう常連になってる気がする。


「あのね、教えて欲しいことがあるの。」

大きな目を瞬きさせて、

カナは俺にそう言ってきた。


…なんか、また可愛くなった気がする。

高3になったカナは、まだまだ鈍感で

俺を日々不安にさせる。


「何?」

素っ気なく俺は答える。


「前さぁ、葉月君、

前の歌ってる時の私を

見たことあるって言ったでしょ?」


「………言ったな。」


「それ、いつなのかなぁって。」

カナが大人っぽい印象を持たれるのは

表情表現が少し控えめだからだろうか。


きょとん、とした表情はよく見るが

驚いた表情や、

怒った表情はあまり見ない。


まぁ、その分笑ったときが凄く綺麗だ。


「あー、それ。聞きたい?」


「うん、聞きたい。」

嬉しそうにテーブルに肘をつくカナ。

そんな表情をされると、

教えざるを得ない。


俺としては

あんまり話したいとは思わないが。


「俺がカナを見たのは…。」