「………で?」

私、相澤奏乃16歳。職業女子高生。


「何か言えよ。」

ただ今、大ピンチかもしれません。


目の前には…

顔が整った見たところ若い男性。

初対面の時に26歳だったから…今31歳?


「ケイ。聞いてるのか?」


「ケイじゃない。」

私は反射的に声を上げた。


「私はもう、"ケイ"じゃないよ。」

その名は、

もう私が名乗って良い名じゃない。


「はぁ…分かった。奏乃。

お前…スタジオで一体何してたんだ?」

そう。今の私の名は奏乃。

相澤奏乃なの。


「……久し振りだね。柚唯(ユイ)君。」

目の前に居る彼は…

前と少しも変わっていなかった。


彼の名は伊東柚唯(イトウ ユイ)。

"前の私"に輝くための名と、

居場所をくれる人を紹介してくれた人。


「話を反らすな。葉月と…

Canzoneと一緒に居たんだろう?」


「別に…

私は友達と一緒に居ただけだよ。」

葉月君も、優杏も、

碧眞君も、翡翠君も。

Canzoneじゃなくて、友達。