アイドルたちの裏の顔!!?




いつからこの家にいることが居心地悪くなったのだろう。

前はね、みんな一緒だと思って居心地がよかったんだ。

でも今はあの家いることが辛い。


愛されているみんな。

誰にも愛されない私。


自分が汚い気がした。


そんな時はこの家から出るんだ。


みんなが寝たのを見計らって。

苦しいしがらみから放たれるために。








「美紀?」


いつもの場所にいるのは咲や舞花やイカツイ人たち。


暗い場所が嫌いな私は明るく輝くネオンで不安をかき消した。


「やっほ〜。みんな。久しぶり。」


私はみんなに右手をあげて手を振る。


「おー。久しぶりじゃん、美紀。」


「こっち来いよぉ。」


何人かの男に呼ばれてそちらに行こうと足を動かす。


やっぱりここは居心地が良い。

だって.....


「美紀!!ちょっと来な!!」


男たちの元へ行こうとする私の腕を掴む咲。


そしてそのまま人がいないとこへ連れて行かれた。







咲は決して暗い場所は選ばない。


「前に言ったよね?アンタにはここは似合わないって。」


咲は怒りのこもった声で続ける。


「最近来なくなったと思ったのに。やっと心から笑ってたのに。どうしてここに戻ってくるの?ここはアンタの居場所じゃない。アンタの居場所は他にあるはずでしょ?」


最後には苦しそうに顔を歪めている咲。


咲は本当にいい人だ。

いつも私のことを考えてくれている。


でも、私は咲が心配なんてしなくて良いほど最低な女だよ?


咲ならきっと知っている。

私がここへ来る最低な理由を。


「私は汚い。誰の幸せも願えない。一人になりたい。一人になりたくない。」


下を向いたまま喋り続ける私。

咲の顔が見れない。


「ここに来るのは幸せになれない人。その人たちなら一緒いて居心地がいいの。一人って感じがしないの。人の不幸を利用してる私は最低でしょ?」


私は最低なの。

みんなが私と違ったことが嬉しいはずなのに一人になった気がして寂しくて。


「確かにここはそんな弱いヤツが集まる場所だよ。でも美紀にはその弱さを埋めてくれる人がいるんじゃないの?」


咲の真剣な声が私の胸をさす。


もうどうしていいかわからない。

何が正しいのかわからない。


助けてよ。











「美紀、最近暗い。」


雪斗はお綺麗な顔を心配そうに歪めてる。


ちょっとびっくりした。

笑顔には自信があるのにな。


「そぉ?普通だと思うんだけどなぁ〜。」


「普通じゃねーよ。」


ヘラヘラ笑う私の言葉を否定するのは奏くん。


こっ怖いです。

目が怖いですよ、奏くん。


「お前、夜遅く家を出てるだろ?」


奏くんの鋭い目。

私の心が全て読まれてそうで怖い。


「私、23時には寝てた.....」


「嘘はよくないって僕に前言ったよね?」


今度は翔汰くん。

いつもの可愛い笑顔じゃない。


嫌だ。

こんな汚い私の心を読まないで。







ピンポーンッ


「あ!!お客さんだ!!」


助かった!!


私は急いでリビングから出る。


みんなで総攻めはやめて欲しい。

みんなのことが好きだから言えない。

嫌われたくない。

こんな私を知ったらきっとみんな私を嫌う。


ガチャッ


玄関の扉を開く。


「....っ。」


声が出ない。

足が震える。


扉を開けた先にいたのは.....







「おっおか......っ。」


あの人は私のお母さん。


「迎えに来たよ。さぁ、行こう?」


暗い部屋。

暗闇の中で輝く包丁。

それを泣きながら力いっぱい握りしめる女の人。

そして赤。


ドクンッ


怖い。

怖い怖い怖い!!


「やっ、嫌!!来ないで!!殺さないで!!」


フラッ


視界が狭くなる。


「美紀!!」


最後に見えたのは私の名前を呼ぶ祐希くんだった。






「.....んっ。」


目を覚ますとそこにはみんながいた。


「あ!!起きた!!」


翔汰くんは安心したように笑い私の頭を撫でる。


「あの人は....っ。」


思い出しただけで吐き気がする。

思い出したくなかった。


「とりあえず帰ってもらった。」


千尋くんは不機嫌そうにそう言う。


なんで不機嫌そうなの?


「.....。」


だけど不機嫌そうなのは千尋くんだけではなかった。


みんな不満そうに私を見ている。


「話は吉佳さんから聞いた。お前、公園にいたんだろ?」


奏くんの言葉を聞いて黙る私。


それ以上は何も言わないで欲しい。

なのに.....。


「言えば楽になるって言ったのは美紀だよ。」


翔汰くんの寂しそうな言葉。


「美紀はズルい。自分のことだけ言わないとかズルいよ。」


雪斗くん。


「頼れって。」


祐希くん。


「強がんな、バカ。」



千尋くん。


みんなみんな私のために心配してくれている。


こんなにたくさんの愛に触れたのは初めてで。

だからこそ嫌われたくなくて。



涙が止まらないよ。



気がつけば泣いていた私。

ボロボロ落ちてそれは止まらない。







「嫌われたくない。こんな私を知られたくない。」


「何を言ったって嫌いにならない。だから言って。
一人にならないで。」


いつか聞いたような台詞を言っている翔太くん。


あぁこの台詞を言ったとき私はなんて思った?


「私ね....」


私はみんなに私について話出した。







何度要らないと言われたのだろう?




「アンタなんて要らない。」


ドンッ


家に帰って来たお母さんに思いっきり蹴られる。


会う度にこれだった。


お父さんは昔事故で死んだ。

薬に溺れたお母さん。

借金まみれのお母さん。


中学3年生。

私の心は完璧に壊れていた。