(んにゃあああぁぁ!!!!!!!!)

恥ずかしさ七割、驚き二割、その他一割で潤の思考回路が大混乱。

「~っ、やぁあ!!」

彼の胸を叩いて苦しさを訴え、少し唇が離れた瞬間、思い切り単語帳を投げつけた。

「おっと、危ない」

彼は無駄な動きもなく単語帳を受け止め、本人に返そうとしたが、無理だった。

「行ってしまったか…」

学校へ続く道を全力疾走する彼女の後ろ姿が視界に映った。

(まずったな。名前聞くの忘れた…。今の名前はなんていうんだろう…?…あ、そうだ…!)

彼女の置き土産である単語帳の裏を見る。

(どれどれ…二年三組、藤沢潤)

二年三組、藤沢…。

彼は柔らかな微笑を浮かべながら、自分も学校へと急いだ。