「さて、善は急げと言うし…」

(う…こいつ聞いてない!)

重衡はポケットからケータイを取り出すと、その場で電話をかけた。

「あ、父さん。朗報です。俺も見つけましたよ。今日連れて帰りますから、夕飯よろしくお願いします。では」

それだけ言うと、彼はさっさとケータイを切った。

通話時間、約十秒。

「あの~、今の電話は…?」

「俺の父に、今日貴女を我が家に招待すると連絡したんです」

「は…?」

「今日、一緒に帰りましょうね」

素晴らしく眩しい笑みを潤に送り「では放課後」と言い残して彼は教室を出ていった。

(あ、有り得ない…!)

呆然としていると、授業開始を告げるチャイムが鳴り響いた。

(何なのよ、あの男ー!!)