背に当たっていた壁の感覚がなくなっていることに気づいた小鞠は、愕然とした。
うさぎから逃げることに夢中で、グランドに出てしまった。
隠れ家から出てしまった。
もう隠れるところはない。
もう逃げ場はない。
いや… 逃げ場ならある。
迫り来るこのヒトを喰い散らかして… ダメ!! ナニ考えてンの、私?!
小鞠は固く目を閉じ、頭を抱えて身を縮めた。
「何故、己を認めてやらぬ?
何故、己を愛してやらぬ?
妾は、ありのままのそなたが好きじゃ。
戻ろう、小鞠。
そなた自身に。」
きつく閉じたはずの瞼から、新しい涙がこぼれ落ちる。
あたたかい、あたたかい、涙…