景時は未だ座りこむ僧を庇うように、手前のオニと対峙した。

電柱に登っていたオニは、そこから飛び降りざまにうさぎに踊りかかる。
だが、うさぎは流れるような動きで仰け反り、オニの突進を避けて空中で一回転した。


「面倒じゃ。
鬼気を放ってよいか?」


背後の僧に下がっているよう合図し、バジュラを取り出した景時は、うさぎの言葉に目を剥いた。


「いやいやいやいや。
勘弁してクダサイ。
俺らどころか、住民みんな巻き添え食らうから。」


「…仕方あるまい。」


うさぎは溜め息を一つ吐いて夜空を見上げると、何もないはずの空中を蹴って下方に跳んだ。
そのまま自らを襲ったオニの懐に飛び込み、片腕を引き千切る。

だがその背後に、植え込みで様子を窺っていた三体目のオニが、牙を剥き出して迫っていた。