「やっぱりこうなったか(笑)」
「やっぱり?」
「うん。火燐は椿が大好きなんだって(笑)」


そういいながら、コップの中のお酒を飲み干す正嗣。美佐子はクスッと笑いながらそのコップに少しの酒を入れてあげる。


「もうすぐ2年になるんだべな・・・」
「そうですね。」


椿がこの家に戻ってきて2年がたとうとしていた。

緑涼は、椿を見ながら今までも出来事を思い出している。そんな時、プラスチックの小さなグラスの表面に桜の花びらが一枚、ふわっと乗っかる。緑涼は、そのグラスを見てニコッとすると、その酒を飲み干した。


「緑涼も、禮漸も・・・火燐も風燕も・・・蓮流も椿も、みんな大きくなったな。」

「うん。みんな背中が大きく感じるんだよね。」

「背中。確かに頼もしくなった気がする(笑)」


親として、子供たちを見つめ続けた正嗣と美佐子。今日見る背中は、いつも以上に大きく感じていた。